24,99 €
近年、ROE(自己資本利益率)は日本でも徐々に浸透し、注目されています。2014年8月に経済産業省より発表された伊藤レポートで、日本企業の課題は欧米企業に比べ、資産回転率や財務レバレッジではなく、稼ぐ力にあると指摘しています。しかし、私は資産回転率の中でも売掛金回転と在庫回転は欧米に比べ、総じて低いことがCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)管理上の課題と考えます。在庫に関しては、従来の在庫回転率、在庫回転期間でなく、在庫回転日数を意思決定のための全社共通管理指標と位置付け、ROE、ROIC(投下資本利益率)の改善に向け、経営陣と現場の一体活動を提唱します。
私は在庫起点経営コンサルタントとして在庫回転日数は経営層、オペレーションを担当する販売、製造、調達、物流関係者で共有すると同時に、調達、生産を決定する際の意思決定を補佐しうる指標であると確信しています。
管理会計「在庫回転」の重要なドライバーとして、PSI(生販在)管理を検討している企業、必見の一冊です。
特典:読者の方には、30分間のオンラインでの無料相談に応じます。
目次
第一章:今、なぜ在庫回転が注目されているのか?
(1)在庫は企業の通信簿
(2)経営の効率性
(3)週次オペレーションサイクル
(4)在庫回転日数に関連する管理指標
第二章:管理会計と財務会計
第三章:CCCの位置付けと日米比較、国際比較
(1)主な財務指標
(2)CCCの位置付け
(3)CCCの日米比較
(4)スポーツ用品業界
(5)化学大手6社
(6)電子部品業界
(7)電子部品商社
(8)間接資材業界
(9)業界別国際比較
第四章:経営陣と現場で共有する週次パフォーマンス結果の重要性
(1)月末締め、翌月払い
(2)月次会計制度
(3)売掛債権
(4)日本電産の取り組み
(5)米HP社の取り組み
(6)在庫鮮度管理 各社の取り組み
(7)週次管理 各社の取り組み
(8)リーマンショック(2008年)から東日本大震災、タイ大洪水後(2012年)
第五章:経営手法・推進体制および求められるシステム要件とその活用
(1)キャッシュサイクルとリードタイム
(2)欠品率
(3)流通在庫(店頭在庫)
(4)在庫総枠管理と単品管理について
(5)売掛金管理の盲点
(6)効果的な経営手法
(7)効果的なシステムとその活用
第六章:実践 在庫の総枠管理と単品管理
(1)在庫診断クリニック
(2)P(調達・生産)、S(販売)、I(在庫)バランスについて
(3)プロダクト・カルテ
(4)簡易版資産管理・在庫の総枠管理と単品管理
(5)在庫管理:量と質の4象限マトリックス手法
Das E-Book können Sie in Legimi-Apps oder einer beliebigen App lesen, die das folgende Format unterstützen:
Veröffentlichungsjahr: 2020
経営者のための管理会計
在庫回転のススメ
~理論と実践: 意思決定を補佐する経営指標の具体的活用方法~
IFCコンサルティングLtd.
髙井重明
近年、ROE(自己資本利益率)は日本でも徐々に浸透し、注目されています。2014年8月に経済産業省より発表された伊藤レポートで、日本企業の課題は欧米企業に比べ、資産回転率や財務レバレッジではなく、稼ぐ力にあると指摘しています。しかし、私は資産回転率の中でも売掛金回転と在庫回転は欧米に比べ、総じて低いことがCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)管理上の課題と考えます。在庫に関しては、従来の在庫回転率、在庫回転期間でなく、在庫回転日数を意思決定のための全社共通管理指標と位置付け、ROE、ROIC(投下資本利益率)の改善に向け、経営陣と現場の一体活動を提唱します。
在庫とは、ビジネスにとって利益の源泉であると同時に、損失をもたらすものであるといわれます。特に製造業、小売業、卸売業では、商品在庫が効率よく売上に転換されているかどうかを計る経営指標として在庫回転があり、一般的には以下の二つが使われています。
1.在庫回転率
在庫回転率とは、一年間に在庫が何回転したかを示す指標です。
在庫回転率(回)= 売上高・売上原価(年間)÷ 在庫金額
在庫回転率は、主に経営者が対外発表等で使用されます。
2.在庫回転期間
在庫回転期間とは、在庫を何日または何か月分持っているか、または在庫をすべて消費(販売)するためにかかる期間を示す指標です。
在庫回転期間 = 在庫金額 ÷ 売上高・売上原価(月次または日次)
食品などの回転の速い業界では、分母に日次売上を使い、「何日分の在庫日数」を示します。
在庫回転期間は、実務的によく活用されます。
在庫金額については、年平均や月末在庫が使われますが、売上高・売上原価は当該期間の実績値が使われます。また在庫金額でなく、数量・重量で示される時もありますが、本書では在庫を棚卸資産として捉えているため、金額を中心に説明します。
どちらも在庫が適正かどうかをみる指標と言われます。在庫の過去、現在の状況を語るにはそれで事足りますが、将来の意思決定のための指標としては不適切と思います。つまり財務会計用の指標であり、管理会計としての在庫回転ではないということです。
在庫回転日数に関しては、季節変動が少ない商品の場合は、過去の販売実績でいいかもしれませんが、調達するときの判断基準、生産するときの判断基準の参考にはなり得ません。
なぜならば、在庫はこれから販売するために存在するからです。
そのためには、売上原価見込みで在庫を暫定評価し、販売が確定した時点で最終評価するというやり方が最も望ましいのではないでしょうか?算出方法は以下のようになります。
在庫回転日数 = 在庫金額 ÷ 売上原価(見込み、実績)
私は在庫起点経営コンサルタントとして在庫回転日数は経営層、オペレーションを担当する販売、製造、調達、物流関係者で共有すると同時に、調達、生産を決定する際の意思決定を補佐しうる指標であると確信しています。
昨今、経営効率を示す指標として、ROA(総資産利益率)、ROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)が脚光を浴びています。また企業が資金を回収する効率性・スピードを示す財務指標として、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)があります。
CCC=棚卸資産回転日数(DIO)+売掛債権回転日数(DSO)- 買掛債務回転日数(DPO)
ROE、ROIC、CCCが日本に導入された背景は以下の通りです。
(日経新聞2012年12月5日)
・ROEは1990年代半ばから、外国人株主が増加し、日本企業の資本効率の低さを指摘され、年金基金連合会が議決権行使の判断基準に一つとしてROEを導入しました。
・ROICは2000年代前半から、事業の資本効率を重視する動きが強まり、投下資本に対する営業利益率を管理指標とする動きが広がりました。
・CCCは2010年前半から、金融危機によってキャッシュフローの重要性が再認識されました。
本書は、管理会計「在庫回転」の指南書(理論と実践)として、経営者、経営管理者、実務者、学生にもわかりやすく説明しています。
在庫回転を現場で使われる単なる指標として捉えるのではなく、企業価値の創造に向け、管理会計として他の経営指標と関連付け、在庫回転を効果的に改善活動につなげるためには、どのような実務的な知識が必要か、またそれを支えるシステムとその活用、最後に実践版として現場で使える在庫管理について、著者の経験および具体的事例を交えて紹介します。
私の座右の銘の一つに「商品と情報は鮮度が命」があります。これは業界、業種に関係なく、適用できるのではないでしょうか? 本書では出版時点で把握可能な最新の四半期毎の決算数値(2019年1月末)を使ってCCCを解説している点も、従来の書籍とは大きく異なります。
管理会計CCCの指南書として情報の鮮度を重要視し、過去11年間(43四半期)をベースに解説しています。
尚、拙著『経営者のための在庫「鮮度管理」のススメ』(日本語・英語、幻冬舎)および電子書籍『経営者のための在庫、売掛金「鮮度管理」のススメ』(5か国語対応:日本語・英語・中国語・ベトナム語・タイ語、IFCコンサルティングLtd.)、『経営者のための管理会計CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)のススメ』(日本語、英語、IFCコンサルティングLtd.)と併読して頂ければ幸いです。
2019年2月
在庫起点経営コンサルタント 髙井重明
第一章 今、なぜ在庫回転が注目されているのか?
(1)在庫は企業の通信簿
(2)経営の効率性
(3)週次オペレーションサイクル
(4)在庫回転日数に関連する管理指標
第二章 管理会計と財務会計
第三章 CCCの位置付けと日米比較、国際比較
(1)主な財務指標
(2)CCCの位置付け
(3)CCCの日米比較
(4)スポーツ用品業界
(5)化学大手6社
(6)電子部品業界
(7)電子部品商社
(8)間接資材業界
(9)業界別国際比較
第四章 経営陣と現場で共有する週次パフォーマンス結果の重要性
(1)月末締め、翌月払い
(2)月次会計制度
(3)売掛債権
(4)日本電産の取り組み
(5)米HP社の取り組み
(6)在庫鮮度管理 各社の取り組み
(7)週次管理 各社の取り組み
(8)リーマンショック(2008年)から東日本大震災、タイ大洪水後(2012年)
第五章 経営手法・推進体制および求められるシステム要件とその活用
(1)キャッシュサイクルとリードタイム
(2)欠品率
(3)流通在庫(店頭在庫)
(4)在庫総枠管理と単品管理について
(5)売掛金管理の盲点
(6)効果的な経営手法
(7)効果的なシステムとその活用
第六章 実践 在庫の総枠管理と単品管理
(1)在庫診断クリニック
(2)P(調達・生産)、S(販売)、I(在庫)バランスについて
(3)プロダクト・カルテ
(4)簡易版資産管理・在庫の総枠管理と単品管理
(5)在庫管理:量と質の4象限マトリックス手法
おわりに
本章では、なぜ、在庫回転を管理会計と位置付け、副題に ~理論と実践:意思決定を補佐する経営指標の具体的活用方法~ と付けた背景についてお話しします。
一般的に、在庫を抱える日本の企業経営者は、「在庫は重要である」という認識は持っていますが、実際問題、生産・販売・在庫管理は、オペレーションを担当する部署(調達、生産、販売、物流)に任せて、結果報告を受けるというスタンスではないでしょうか? 上場企業であれば、投資家が懸念を表明するケースもあるでしょうが、非上場企業においてはそれがありません。また、在庫を経営指標として掲げる企業はそれを改善活動につなげているでしょうか? 本書を通じて、読者の皆様にそれを紹介したいと思います。
「在庫は企業の通信簿である」
これは元ソニー副会長、ソニーエレクトロニクスCEOの中鉢良治氏(現在、産業技術総合研究所 理事長)の言葉です。在庫はオペレーションの結果であると同時に、プロセス改善活動の貴重な証拠でもあります。在庫が発生した事由を徹底的に分析し、改善活動に役立てることの重要さを説き、在庫とキャッシュフローの関係を強調していました。
彼は社長時代、在庫に問題があると、二つの質問をしました。
① PSI(生産・販売・在庫)のバランスは大丈夫か?
② 滞留在庫はないか?
小売業であれば、商品を調達するとき、また製造業であれば、材料を調達し、生産するとき、需給を考慮して数量を決定します。そして取引先に販売されます。販売が完了した時点で、会社の棚卸資産は減りますが、流通業者の倉庫に眠っているか、店頭で眠っているかを確認する必要があります。
またプロセス、リードタイムと在庫の関係は以下のようになります。
製造業の場合、在庫は材料部品、仕掛品、完成品、販社在庫又は物流倉庫在庫、そして流通在庫となります。
企業にとって、在庫とは棚卸資産として貸借対照表(B/S)に表示される在庫を指します。
上記では連結在庫として表記していますが、流通在庫に大きく影響を受けます。サプライチェ―ンでは一般的に実需とは、実売を意味し、資産を移管した後、商品が最終消費者に販売されることを意味します。
従って、自社在庫の適正を語るときに、取引先の在庫状況の適正値を把握する必要があります。
ソニーでは連結在庫(販社在庫+製造事業所在庫)と流通在庫を合わせた在庫を超連結在庫と呼んでいました。販売会社は担当する市場の流通在庫を可能な限り把握し、販社在庫と合わせて確認した上で、製造事業所に将来の発注を計画・修正します。
特に未曽有の金融恐慌であった2008年のリーマンショック後、営業活動のやり方も大幅に修正しました。
ソニーに関しては、上記にありますように、この頃より全世界的に実売情報、在庫状況の削減、健全化に注力し、超連結在庫管理 ※を本格始動させました。
●全世界の連結在庫を一元化して週次で見えるようにする
●流通在庫を週次で見えるようにし、回転日数より基準在庫を算出
セルアウト起点の補充型オペレーション導入により、総完成品在庫回転力を高める
●最も付加価値の低い形で在庫を持ち、転用を容易にする
●需要の変化にスピーディかつフレキシブルに対応できる生産体制
※ 超連結在庫とは、連結在庫(販社在庫+製造事業所在庫)に流通在庫を加えた在庫(ソニー用語)
一般的に売上増に伴い、在庫は増加しますが、以下に挙げた在庫増は、一般的に発生しうるものです。皆さんは誰の責任であると思いますか?
1.マネジメント判断で増産が決定となり、在庫増となった。
2.商品の補修用部品の最終生産のため購入数量を増やした。
3.為替の変動に伴う購入単価値上げを回避するため、現行価格で今期分をまとめて購入した。
4.生産効率を上げるため、需要以上の生産に踏みきった結果、在庫増となった。
5.販売できると思って生産に踏み切ったが、販売不振により在庫増となった。
6.競合他社の値下げの影響を受け、現行価格での出荷ができなくなり、在庫となった。
7.品質不良により出荷停止となったため、在庫となった。
8.部品調達上、値下げ交渉のため、所要量以上の買付を行ったため、在庫が増えた。
9.与信管理上、問題が発生したため、当月出荷できず在庫となった。
10.輸送業者の突然のストライキにより、出荷できず在庫となった。
11.大手取引先より決算期での在庫調整のため出荷延期するよう要請があり、在庫となった。
マネジメント起因、生産起因、販売起因、調達起因、物流起因、取引先起因等々が挙げられると思います。
これらの在庫増はキャッシュフロー悪化に直結するため、管轄する部署に対して、その原因分析と対策が求められます。「在庫は企業の通信簿」とは、これらの要因を把握した上で、対策・改善活動を進めるということが本来、あるべき在庫管理と言えるのではないでしょうか?
経営の効率性を示す指標については、第二章で詳述しますが、ここでは、在庫に関する指標について説明します。一般的には、以下の二つが使われます。
1.在庫回転率
在庫回転率とは、一年間に在庫が何回転したかを示す指標です。
在庫回転率(回)= 売上高・売上原価(年間)÷ 在庫金額
在庫回転率は、主に経営者が対外発表等で使用されます。
2.在庫回転期間
在庫回転期間とは、在庫を何日または何か月分持っているか、または、在庫をすべて消費(販売)するためにかかる期間を示す指標です。
在庫回転期間 = 在庫金額 ÷ 売上高・売上原価(月次または日次)
食品などの回転の速い業界では、分母に日次売上を使い、「何日分の在庫日数」を示します。
在庫回転期間は、実務的によく活用されます。
在庫金額については、年平均や月末在庫が使われますが、売上高・売上原価は当該期間の実績値が使われます。また数量で示される時もありますが、本書では在庫を棚卸資産として捉えているため、金額を中心に説明します。
どちらも在庫が適正かどうかをみる指標と言われます。在庫の過去、現在の状況を語るにはそれで事足りますが、将来の意思決定のための指標としては不適切と思います。つまり財務会計用の指標であり、管理会計としての在庫回転ではないということです。
在庫回転日数に関しては、季節変動が少ない商品の場合は、過去の販売実績でいいかもしれませんが、調達するときの判断基準、生産するときの判断基準の参考にはなり得ません。
なぜならば、在庫はこれから販売するために存在するからです。
そのためには、売上原価見込みで在庫を暫定評価し、販売が確定した時点で最終評価するというやり方が最も望ましいのではないでしょうか? 算出方法は以下のようになります。
在庫回転日数 = 在庫金額 ÷ 売上原価(見込み、実績)
現場での意思決定を補佐するためには、今ある在庫に対して、どれだけの販売見込みがあり、そのためにはどれだけの調達・生産が必要であるか、すべて在庫回転で示すことができます。
企業で在庫を評価するときの指標を一つで表し、それを全社展開することが求められているのではないでしょうか? 私は在庫起点経営コンサルタントとして、頻繁に適正在庫について質問を受けますが、上記の在庫回転日数を週次、月次で行うことを勧めています。
週次の場合、先行4週間(28日)の売上原価を使うと、以下のようになります。
在庫回転日数 = 在庫金額 ÷ 売上原価(見込み、実績)×28日 (週次の場合)
在庫回転日数 = 在庫金額 ÷ 売上原価(見込み、実績)×30日 (月次の場合)
企業によっては、簡便性から売上原価は翌月でなく当該月を使うケースがあるようです。
単品を測定する限りにおいては、過不足ははっきりします。
しかしながら、企業で取り扱うすべての在庫(製品・商品、仕掛品、原材料等)に適用する場合、デメリットとしては、品薄在庫、過剰在庫が相殺されてしまうため、全体では健全であるという誤った評価をしてしまうというリスクがあります。
本来、在庫回転は数量・重量で測定しても、金額でも同じ数値であるべきと思います。
資産としての在庫はB/Sに記載される金額がベースになります。一方、現場オペレーションで使われる在庫は、数量や重量がベースになり、両者の数字は異なります。過去のトレンドを把握できても、将来の仕入/生産を決定するための指標として活用されていないのではないでしょうか?
在庫回転日数情報は将来の仕入/生産を決める判断基準
例えば、事業を新たに開始するとき、又は販売会社を設立して、商品の売買を開始するとき、次のステップを踏みます。
販売見込みを立てる仕入/生産計画を立てる在庫計画を立てる在庫回転日数計画を立てる下表は、商品Aの予実績をまとめたものです。
計画では、在庫回転日数30日を下回るレベルを適正とします。
仕入/生産は先行4週間先を変更可能とします。
・販売:当初、計画を上回りますが、第6~9週に下方に向かいます。
・仕入/生産:第4~5週と増やしますが、その後、販売不振となり、減産を決定
・在庫回転日数:(週末在庫)÷(先行4週間の販売)× 28日で算出30日を下回るために、仕入/生産調整を行うトリガーとなります。
在庫回転日数は、管理会計として、意思決定を補佐するための指標として重要です。上記は商品Aのみでしたが、商品B、商品Cと増えていくに従い、数量ではなく、金額に置き換えることで、全体の仕入額/生産額を調整する際の判断基準になります。
次に経営層にとって、在庫回転日数はどのように活用されるのでしょうか?
下記は、年間の売上、仕入/生産、在庫、在庫回転日数について、計画、翌月の見込み、実績をまとめたものです。
在庫回転日数に関しては、3通りを比較してみました。
A: 在庫回転日数 = 在庫 ÷ 翌月売上原価×30日
B: 在庫回転日数 = 在庫 ÷ 当月売上高 ×30日
C: 在庫回転日数 = 在庫 ÷ 当月売上原価×30日
Aに関しては、予兆管理が可能であるため、年初で定める在庫回転日数の数値をベースに販売調整、仕入/生産調整を行います。事業本部毎、商品カテゴリー毎に同じやり方をすることで、在庫回転日数に合わせた調整を行います。これに対して、B、Cは過去の売上高、売上原価を使うため、予兆管理は不能になります。
在庫回転日数については、A、B、Cともに5月が最も高い点は共通していますが、予兆管理が可能なAについては、4月に見込んだ時点で既に在庫回転が悪くなると予見しています。
販売は、1月から3月まで計画を大幅に上回り、4月の仕入/生産も計画比400億円増えると見込みます。しかし売上見込みについては、4月までの販売は好調ですが、5月から計画よりも300億円下回ると見込みます。仕入/生産は計画比100億円の調整をしますが、在庫が計画比620億円増と見込み、在庫回転日数は計画比27日となります。通常、オペレーションは週次で行われますので、4月の在庫見込みをベースに販売見込み、仕入/生産見込みが立てられます。
このケースでは、4月の時点で在庫要注意であることは明らかです。BとCは4月の時点では販売が好調であったため、在庫リスクは5月が締まった段階、つまり6月に入ってから発覚します。
BとCの違いは、売上高か売上原価(70%)の違いですが、売上高で算出すると、10日以上の開きがあります。売上原価の低い業種については、さらにそのGAPは広がります。
従って、在庫回転日数を算出する際、売上高を使うのは不適切と言えます。
次にオペレーションサイクルについて説明します。
日本では、税法や会社法などの法律に基づく決算は年次で、ほとんどの企業では月次で財務諸表を作成し、上場企業では四半期をベースに対外発表を行うのが一般的です。日本でも、週単位で経営層を含めて、意思決定を行っている企業もありますが、週次経営管理を行う欧米企業に比べるとまだ少ない方ではないでしょうか?
日本電産は損益の週次管理を実践しています。全社、全組織で月に4回当月の着地点を見直すため、予測精度は相当なものであるといわれます。
今日、ビジネス環境はリアルタイムの時代に突入しています。
資材調達、生産、物流、販売、在庫、販売見込、流通在庫(=店頭在庫)
はリアルタイム又は日次で刻一刻と変化しているのに対し、在庫(自社在庫と流通在庫)の管理サイクルについては、月次で管理している会社が多いのではないでしょうか?
特に中小企業の場合、人物金に限りがあるため、一気通貫で確認するのは難しいでしょう。
私はスピード経営を着実に実現するためには、週次オペレーションは不可避であると考えます。
欧米の先進企業では現場から経営陣まで週次改革を断行しているのに対し、日本では一般的に、現場は日次、週次、経営管理は月次。在庫に関しても、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)が確定するまで共有できていないという企業は想像以上に多いのではないでしょうか?
では、在庫回転日数を月と週でモニタリングすると、どのくらい違って見えるのでしょうか?
調達から実売まで週次で把握し、相関を確認するも、経理実績に合わせると月次になり、要因分析から、改善活動につなげる時間的余裕はないといってよいでしょう。
特に、売上が月末偏重型の企業によくあるケースとして、在庫は月初に積み上がり、月末に向けて下がる傾向にあります。
月次と週次では見える景色が違ってきます。それをP(調達・生産)、S(販売)、I(在庫)、在庫回転を中心に見てみましょう。PSIバランスがとれているということは、オペレーションが健全であることを意味します。
月次管理
P(調達・生産):販売動向に合わせて若干生産(調達)の調整をした。
S(販売):3月は2月より若干下がるが、4月には一段と下がると予測。
I(在庫):徐々に悪化し、3月末は1月の倍近くまで上昇
在庫回転日数(翌月の販売で割って算出。本来であれば売上原価が理想)
在庫回転は今後の悪化状況を示しています。
週次管理
A社が月でなく週単位で確認しているとどのようなことがわかるのでしょうか?
先ず、販売ですが、3か月間とも、月の後半(3~4週)に6~7割を集中していることがわかります。
P(調達・生産):販売に合わせて調整はしているものの、月内は同じ量を調達・生産
S(販売):上述のように、月に第1週、第2週は全体の3~4割
I(在庫):生産と販売は連動していないため、在庫は加速度的に増加しています。
