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変化対応力を創出し、財務体質、収益力を高める戦略的管理会計
2020年3月11日にWHOが新型コロナウイルスをパンデミック(世界的大流行)と認定してから1年3ヶ月が経過しました。新型コロナウイルスの感染は世界中に広がり、グローバル化された世界の社会・経済は大きな打撃を受け、その脆弱性が浮き彫りになっています。
<コロナ禍で顕在化した新たな経営課題>
・売上減に伴う損益分岐点の悪化
・コロナ禍の影響で経営陣と現場での意識のかい離の拡大
・増え続ける社内不正、海外子会社の不正会計、内部統制の不備
・脱炭素社会の実現に向けたロードマップ、目標設定と具体的な施策
本書では、非財務情報として、脱炭素社会に加え、
食糧問題、
海洋プラスチック問題、衣料廃棄ロス問題にも言及しています。
このような状況下において最も必要なのは、過去に蓄積された失敗体験、成功体験からの知恵に加えて、仮説と検証を生かした変化対応力ではないでしょうか?
変化対応の企業体質を構築するためには、目標管理よりもピッチを狭くして、変化点管理が求められます。そのためには、共通のオペレーションサイクルを週次に合わせ、従来の経営指標(財務指標と非財務指標)を連鎖させ、バランス・スコアカードの発想でコックピット経営を行うことが急務です。私は在庫起点経営コンサルタントとして、“経営陣と現場を繋ぎ、即戦力として活用できる管理会計”を提唱します。特に、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)とIFC(在庫鮮度管理)の伝道者として、本書では100社を超える日米欧企業のケーススタディを基に、経営者、経営管理者、実務者、学生にわかりやすく説明しています。
特典:読者の方には、30分間のオンラインでの無料相談に応じます。
目次
第一章 管理会計と企業価値経営指標
(1)管理会計と財務会計
(2)固定費、変動費、損益分岐点管理
(3)企業価値経営指標、特にROE、ROICと他社の運用事例
第二章 運転資本、キャッシュ化速度(CCC)について
(1)管理会計CCCの位置付け
(2)CCC日米比較と企業事例 (業界別、日本・国際比較)
(3)在庫回転日数に関連したSCM改革での管理指標
(4)コロナ禍における変化対応型企業
第三章 在庫と財務の関係
(1)在庫管理とは?
(2)財務視点から見た在庫
損益計算書と在庫
貸借対照表と在庫
キャッシュフロー計算書と在庫
(3)在庫欠品率、適正在庫、在庫評価
第四章 非財務情報
(1)ESGとSDGs
(2)食糧問題、海洋プラスチック問題
(3)パリ協定(温室効果ガス排出)
(4)脱炭素社会:世界の潮流と日本政府の立ち位置
(5)環境に関する国際的組織 (TCFD、SBTイニシアティブ、RE100)
第五章 不正会計リスクの軽減
(1)増え続ける不正会計リスクの増大と対策
(2)不正のトライアングル (機会、動機、正当化)
(3)カネボウの不正会計と東芝の不正会計
(4)海外子会社の不正会計
(5)不正会計防止策
第六章 効果的な施策
(1)PSI(生販在)管理
(2)モノと金の鮮度管理(在庫、売掛金、買掛金)
(3)在庫の総枠管理と単品管理
(4)週次オペレーションサイクル
(5)CCCを改善するための施策
(6)マネジメント参画の実地棚卸について
(7)在庫診断クリニック
(8)管理の見える化と自律の見える化の連鎖
第七章 効果的な経営手法
(1)京セラのアメーバ経営
(2)在庫起因コストと純資産利益率管理
(3)バランス・スコアカード
(4)シックスシグマ手法
(5)ABC分析(活動基準原価計算)とABM(活動基準原価管理) (6)効果的なITソリューションと推進体制
第八章 日本の商慣習と会計制度における課題
(1)月末締め、翌月払い
(2)月次会計制度
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Veröffentlichungsjahr: 2021
2020年3月11日にWHOが新型コロナウイルスをパンデミック(世界的大流行)と認定してから1年3ヶ月が経過しました。新型コロナウイルスの感染は世界中に広がり、グローバル化された世界の社会・経済は大きな打撃を受け、その脆弱性が浮き彫りになっています。
ウイルス発生の背景には、人類が自然を無視し、経済活動を進めてきたことによる生態系の破壊である、とする解釈もあります。人間の社会が自然環境と密接に関わっていることを改めて認識する必要があるといえるでしょう。終息させる有力な手段は、変異ウイルスの早期発見、「検査と隔離」とワクチン接種が最も効果的であることが明白になりました。
VUCAの時代(2010年代より)
VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)から頭文字をとって作られた単語で、現代のカオス化した経済環境を示す言葉です。つまり、「予測不能な状態」を意味します。加えて、地球温暖化、環境問題はESG、SDGsの喫緊の課題となっています。脱炭素社会に関しての認識は、この1年間で大きく前進しました。
脱炭素社会とは、地球温暖化の原因となる、温室効果ガスの実質的な排出量ゼロを実現する社会をいいます。温室効果ガスの排出量を抑制し、排出された二酸化炭素を回収することで、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにするものです。地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を抑制するという概念は「カーボンニュートラル」とも呼ばれています。世界は2015年のパリ協定で定める目標(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする。そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる)に向けて、2050年までのカーボンニュートラルを目指しています。
現実問題として、海水温度の上昇にともなう異常気象は、世界の各地で甚大な被害をもたらしています。昨日までは順風満帆であったビジネス、生活環境は一夜にして急変してもおかしくないという現実は、これからも繰り返されるでしょう。
そして、脱炭素社会に貢献しない企業の持続的発展は益々、難しくなるでしょう。
製造業、流通業、小売業すべての企業で求め得られるのは、3つの取り組みではないでしょうか?
<企業の脱炭素取り組み3つの段階(スコープ)>
スコープ1 自社の生産活動に伴って排出される二酸化炭素(CO2)を抑制したり、ネットでゼロにしたりする段階。
スコープ2 生産活動に伴う電力使用を通じた間接的な排出を対象にする段階。
スコープ3 原材料の仕入や下請けの組み立て、販売など自社以外のすべてのサプライチェ-ンを含めて脱炭素を目指す段階。
本書では、非財務情報として、脱炭素社会に加え、食糧問題、海洋プラスチック問題、衣料廃棄ロス問題にも言及しています。
<今、求められる管理会計とは?>
管理会計は、目的とやり方において財務会計、税務会計と大きく異なります。
財務会計・税務会計は外部に公表することを目的に、管理会計は企業内で会計面からの分析を行うことを目的にします。財務会計は外部へ公開をするため、企業会計原則に基づきますが、管理会計はあくまでも内部資料を作成するために運用されるので、特に基準等はありません。
社内の年次計画策定、部門別損益計算書、原価計算は一般的で、決算を扱う部署に依存されているようです。これらの貢献対象は全社、ビジネス部門になります。では、経営者を対象とする管理会計とは何を指すのでしょうか?それは経営戦略と一体化した業績管理になるでしょう。
<コロナ禍で顕在化した新たな経営課題>
・売上減に伴う損益分岐点の悪化
・コロナ禍の影響で経営陣と現場での意識のかい離の拡大
・増え続ける社内不正、海外子会社の不正会計、内部統制の不備
・脱炭素社会の実現に向けたロードマップ、目標設定と具体的な施策
このような状況下において最も必要なのは、過去に蓄積された失敗体験、成功体験からの知恵に加えて、仮説と検証を生かした変化対応力ではないでしょうか?
変化対応の企業体質を構築するためには、目標管理よりもピッチを狭くして、変化点管理が求められます。そのためには、共通のオペレーションサイクルを週次に合わせ、従来の経営指標(財務指標と非財務指標)を連鎖させ、バランス・スコアカードの発想でコックピット経営を行うことが急務です。
私は在庫起点経営コンサルタントとして、“経営陣と現場を繋ぎ、即戦力として活用できる管理会計”を提唱します。特に、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)とIFC(在庫鮮度管理)の伝道者として、本書では100社を超える日米欧企業のケーススタディを基に、経営者、経営管理者、実務者、学生にわかりやすく説明しています。
キャッシュ化速度
製造業であれば、材料・原料を購入して、生産し、販売し、代金を回収する、小売業であれば、商品を購入して、販売し、代金を回収するという企業活動のプロセスにおいて、売上の入金よりも先に、材料・原料・商品の購入代金を支払う場合、そのタイムラグを埋め合わせるために、一定のキャッシュが必要になります。これを運転資本(運転資金)といいます。
運転資本が増える場合には、新たなキャッシュが必要になってきますし、逆に運転資本が減る場合には、その分のキャッシュを用意する必要がなくなります。企業が資金を回収する効率性・スピードを示す財務指標として、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)があります。本書では、キャッシュ化速度と呼びます。
CCC=棚卸資産回転日数(DIO)+売掛債権回転日数(DSO)- 買掛債務回転日数(DPO)
このキャッシュ化速度を速める効果は、オペレーションを強化するだけではなく、不正会計の発生する余地を極力、減らす点にあります。たとえば、架空売上・架空購入はもとより、B/S上に現れる売掛債権、棚卸資産、買掛債務において不正会計は限定的になるでしょう。年度末を締めてから決算書類に不正がないかどうかを、AIやビッグデータで解析するといった作業は要らなくなるでしょう。結果として、収益の向上、企業価値の向上につながるのではないでしょうか?
キャッシュ・コンバージョン・サイクルは、欧米では普及していますが、日本では一部の企業を除いてまだまだ普及していない状況です。
商品と情報は鮮度が命
私の座右の銘の一つに「商品と情報は鮮度が命」があります。これは業界、業種に関係なく、適用できるのではないでしょうか? 本書では出版時点で把握可能な最新の四半期毎の決算数値(2021年3月末前後)を使ってCCCを解説している点も、従来の書籍とは大きく異なります。
情報の鮮度を重要視し、直近3年間(12四半期)をベースに解説しています。
尚、拙著『経営者のための在庫「鮮度管理」のススメ』(日本語・英語、幻冬舎)および電子書籍『経営者のための在庫、売掛金「鮮度管理」のススメ』(5か国語対応:日本語・英語・中国語・ベトナム語・タイ語、IFCコンサルティングLtd.)、『経営者のための管理会計「在庫回転」のススメ』(日本語・英語、IFCコンサルティングLtd.)、『経営者のための管理会計CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)のススメ』も併読して頂ければ幸いです。
2021年6月
在庫起点経営コンサルタント 髙井 重明
はじめに
変化対応力を創出し、財務体質、収益力を高める戦略的管理会計
第一章 管理会計と企業価値経営指標
(1)管理会計と財務会計
(2)固定費、変動費、損益分岐点管理
(3)企業価値経営指標、特にROE、ROICと他社の運用事例
第二章 運転資本、キャッシュ化速度(CCC)について
(1)管理会計CCCの位置付け
(2)CCC日米比較と企業事例 (業界別、日本・国際比較)
(3)在庫回転日数に関連したSCM改革での管理指標
(4)コロナ禍における変化対応型企業
第三章 在庫と財務の関係
(1)在庫管理とは?
(2)財務視点から見た在庫
損益計算書と在庫
貸借対照表と在庫
キャッシュフロー計算書と在庫
(3)在庫欠品率、適正在庫、在庫評価
第四章 非財務情報
(1) ESGとSDGs
(2) 食糧問題、海洋プラスチック問題
(3) パリ協定(温室効果ガス排出)
(4) 脱炭素社会:世界の潮流と日本政府の立ち位置
(5) 環境に関する国際的組織 (TCFD、SBTイニシアティブ、RE100)
第五章 不正会計リスクの軽減
(1)増え続ける不正会計リスクの増大と対策
(2)不正のトライアングル (機会、動機、正当化)
(3)カネボウの不正会計と東芝の不正会計
(4)海外子会社の不正会計
(5)不正会計防止策
第六章 効果的な施策
(1)PSI(生販在)管理
(2)モノと金の鮮度管理(在庫、売掛金、買掛金)
(3)在庫の総枠管理と単品管理
(4)週次オペレーションサイクル
(5)CCCを改善するための施策
(6)マネジメント参画の実地棚卸について
(7)在庫診断クリニック
(8)管理の見える化と自律の見える化の連鎖
第七章 効果的な経営手法
(1)京セラのアメーバ経営
(2)在庫起因コストと純資産利益率管理
(3)バランス・スコアカード
(4)シックスシグマ手法
(5)ABC分析 (活動基準原価計算)とABM(活動基準原価管理)
(6)効果的なITソリューションと推進体制
第八章 日本の商慣習と会計制度における課題
(1)月末締め、翌月払い
(2)月次会計制度
おわりに
参考文献
この章では、管理会計と財務会計について概説し、損益分岐点管理、企業価値経営指標について、特にROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)と他社の運用事例をわかりやすく紹介します。
先ず、事業プロセスを念頭に置いてみましょう。新しい事業を展開するとき、業種に関係なく、次のようなプロセスが考えられます。日沖健氏は著書『ビジネスリーダーが学んでいる会計&ファイナンス』(中央経済社)で7つのプロセスを提唱しています。
❶事業環境分析
一般的にSWOT分析(Strength強み、Weakness 弱み、Opportunity機会、Threat脅威)の観点から包括的に内部環境、外部環境の状況を分析します。
・Strength強み:目標達成に貢献する企業内部の特質
・Weakness弱み:目標達成の障害となる企業内部の特質
・Opportunity機会:新規参入等、売上貢献が期待できる領域、外部の特質
・Threat脅威:目標達成の障害となる外部の特質
❷ビジョン・目標
参入するビジネス環境、企業理念により特異性を発揮する領域であり、長期的展望を踏まえての設定が重要であることは言うまでもありません。
❸経営戦略・計画
マイケル・ポーター氏が1980年に提唱した競争戦略はあまりにも有名です。日本に関しては、1972年に田岡信夫氏が提唱したランチェスター戦略についても簡単に説明しましょう。
・競争戦略は、5つの力を特定し、競合他社、新規参入者、サプライヤー、顧客、代替品という「5つの競争要因」によって「業界構造」が魅力的かどうか(=儲かりやすいかどうか)を分析し、その分析に基づいて戦略を立案することの有効性を説いたもので、3つの基本戦略を提唱します。
1.コスト・リーダーシップ戦略:一般的に、財務体質の強い企業や大企業に向けの戦略
2.差別化戦略:一般的に、資本力のある企業や大企業向けの戦略
3.集中戦略:一般的に、経営資源の限られた企業にも活用しやすい戦略
・ランチェスター戦略は、「ランチェスター法則」(イギリス人の航空工学の研究者F.W.ランチェスター(1868~1946)が第一次世界大戦のとき提唱した「戦闘の法則」)を原点に、日本で生まれた競争です。ここでは、ランチェスター強者の戦略とランチェスター弱者の戦略について説明します。
「ランチェスター法則」第一法則:一対一が戦う一騎討ち戦、狭い範囲で(局地戦)、敵と近づいて戦う(接近戦)原始的な戦いの場合に適用されます。 戦闘力=武器効率 × 兵力数
「ランチェスター法則」第二法則:集団が同時に複数の敵に攻撃をすることのできる近代兵器(確率兵器という)を使って戦う戦闘方法を確率戦といい、広い範囲で(広域戦)、敵と離れて戦う(遠隔戦)場合に適用されます。 戦闘力=武器効率 × 兵力数の2乗
「ランチェスター戦略」は「ランチェスター法則」をビジネスに応用したものです。戦闘力を、顧客を開拓し売上を上げ利益を確保する「営業力」と置き換えます。そして武器は商品力、兵力は販売力に相当します。
川勝宜昭氏は著書『日本電産流「V字回復経営」の教科書』東洋経済新報社で、ランチェスター戦略はトヨタが使った戦略であると説明しています。それによると、1970年代、高度成長期を舞台にして自動車業界のビッグ2であるトヨタと日産が、激しいシェア競争を繰り広げて、市場シェアは全くの均衡状態にありました。当時の両社を形容するキャッチフレーズとして、「技術の日産」「販売のトヨタ」と言われていたように、車の技術面で一日の長があった日産に対して、トヨタはその劣勢を挽回すべく、ランチェスター戦略の有用性に着目して、総力戦に役立てるため、販売店の戦力投入対策(日産に対して、何倍の営業マンを投入すれば、その地域を制覇できるか)に役立てたと説明しています。
また、同氏によると、M&A担当役員として日本電産に入社し、買収したばかりの日本電産芝浦の再建作業で、永守社長から課せられた再建目標は「1年以内の期間損益の黒字化」、「1年以内の売上倍層」そのための施策はたった1行「営業マン1人当たり訪問件数月100件を達成する事」であったといいます。
ランチェスター戦略に当てはめると、会社の売上高を前期比2倍にするとは、戦果(結果)=2倍にするということ。必要な市場投入エネルギー量=2の2乗、つまり4倍となる。
現在の営業マンの平均訪問件数が、月20件ならば、80件にする必要がある。訪問件数を変えないのであれば、4倍の営業マンが必要になる。営業マンの増員という、会社にとって出費のかかるやり方ではなく、現有要因で、つまり(固定費の)コストアップなしで所定の成果を出す必要があると説いています。
日本電産では、以下の営業活動方程式を実践しているのも実に興味深いところです。
売上高=訪問件数×引合い率(引合い件数/訪問件数)×受注率(受注件数/引合い件数)×受注単価
今日の競争激甚時代では、受注単価を上げることは難しいので、売上高を上げるには、訪問件数、引合い件数、受注件数を上げればよい。
ランチェスター戦略では、市場シェア1位(市場占有率42%)の企業のみが強者、2位以下を弱者と定義します。
「ランチェスター強者の戦略」:「ミート戦略」と呼ばれ、弱者の差別化戦略を封じ込める意味です。同質化競争に持ち込めば武器効率が同等となるので兵力数で勝敗が決まります。模倣、追随、二番手作戦などをミートと呼んでいます。
「ランチェスター弱者の戦略」:「差別化戦略」と呼ばれ、竹田陽一氏は著書『ランチェスター弱者戦略必勝の戦略 強者に勝つ15の原則』ビジネス社で、9つの戦略概念を提唱しています。
1.全体発想を捨てて、要点を細分化する。
2.勝ちやすい場面を選ぶ。
3.重点主義に徹し、No.1づくりを目指す。
4.営業活動は局地戦をする。
5.戦闘時間を長くする。
6.接近戦で利用者に近づく。
7.軽装備で自由度の高さを保つ。
8.先制攻撃ですぐに実行する。
9.隠密行動をとり、表面に出ない。
(出所:『ランチェスター弱者必勝の戦略 強者に勝つ15の原則』竹田陽一著、ビジネス社を参考に改編)
マイケル・ポーター氏の競争戦略は、ランチェスター戦略と相通じるところがあるのは興味深いところです。
最近では、ESG(環境・社会・企業統治)、SDGs(Sustainable Development Goals持続可能な開発目標)に向けて政府機関、企業を含む社会を構成するすべての組織はその達成に向けて、どのように貢献していくかの議論が高まっています。
ESG投資(環境と社会、企業統治の3分野に対する企業の取組みで投資先を選ぶ投資手法)は、欧米の年金基金を中心に世界の機関投資家が注力しています。日本でもESG経営、SDGs経営という言葉が普及しつつあります。
企業がESGなど非財務情報の開示を拡大し、2019年度は財務と非財務の両方を網羅した「統合報告書」を新たに発行し、発行企業数は500社を超えた。投資家は短期の収益力だけでなく、持続性も加味した総合力で企業を選別するようになった。非財務の開示が広がれば、総合力に優れた企業に資金が向かう流れが強まる。(出所:日経新聞2020年3月17日)
2019年8月12日の日経新聞で、ROEとESGを合わせたROESGという新指標に関して世界トップ100社を報道。うち51社がアメリカ企業、24社が欧州企業、そして日本企業は4社(花王、KDDI、NTTドコモ、JT日本たばこ産業)でした。
ROESGの算出方法
ESGスコアは、アラベスク、サステイナリティクス、FTSE、MSCI、ロベコのESG評価機関5社の2019年3月末時点の評価を用いた。各社の上位10%の企業を満点(1点)として10%ごとに0.1点ずつ減らし5社の点数を平均した。上位には最大3割のプレミアムを乗せ、最高点を1.3とした。QUICK・ファクトセットのデータからROEの3期平均を算出し、ESGスコアと掛け合わせた。株式時価総額300億ドル(約3.2兆円)以上、自己資本比率20%以上の企業を対象に、資本効率を示す自己資本利益率(ROE)にESGスコアを乗じた。5つの評価機関すべてのスコアがある企業に絞り、263社が対象となった。
今日、グローバル社会経済の更なる発展と成長に寄与する取り組みが全世界で求められています。
❹組織・経営資源
ヒト、モノ、カネと言われるように、資金調達を計画します。加えて、情報も重要な経営資源といえるでしょう。
❺実行 P(Plan)
設備投資を実行します。また実行の過程ではリスク管理をします。
❻評価 C(Check)
経営指標で定量的に業績を評価します。また設備投資の採算に関しても、NPV(Net Present Value)正味現在価値、IRR(Internal rate of return)内部収益率、回収期間法、ROI(Return on Investment)投資利益率法等で評価します。そして事業活動の成果である当期純利益を配当などで配分します。
❼改善 A(Act)
PDCAサイクルの最後のAで改善することを継続的に実施することで、企業価値を高めることは言うまでもありません。ここで問題解決のPDCAについて、お話しします。遠藤功氏(著書『現場力』ローランド・ベルガー日本法人会長)によると、問題解決のPDCAとは、Problem-finding(問題発見)、Display(問題を見えるようにする)、Clear(問題を取り除く)、Acknowledge(問題解決を確認する)の4つから成り立ちます。
従来の「計画達成のPDCA」が「Plan(計画)」を軸にサイクルが回るのに対して、「問題解決のPDCA」は、「Problem(問題)」が中心に回ります。
自律的問題解決型組織を目指すためには、「Plan(計画)」だけでなく、実行上の「Problem(問題)」に着目する必要があり、「Display」すなわち問題や異常を「見える」ようにすること。問題を発見するだけでなく、周知させることが極めて重要です。多くの企業では、問題や異常が発見できないわけではありません。多くの場合、それらがさらけ出され、組織の共通認識となっているかどうかがポイントで、問題解決のPDCAサイクルを回し続けることによって進化する現場が生まれると説明しています。
図に表すと次のようになります。
次に管理会計と財務会計の違いについて説明します。下表は、事業活動のプロセスを示したものです。
一般的に、❶では財務諸表の作成、分析をする作業のことを財務会計、また❸❺❻の会計作業を管理会計、❹をファイナンスと呼びます。
財務会計は外部に公表することを目的に、管理会計は企業内で会計面からの分析を行うことを目的に作成されます。財務会計は外部へ公開をするため、企業会計原則に基づいて作成をすることになりますが、管理会計はあくまでも内部資料を作成するために運用されるので、特に基準等はありません。
一般的に財務会計は財務諸表である損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/F)が作成され、過去志向であるのに対し、管理会計では、厳格なルールや制限はなく、会社ごとに独自のレポート形式を用いるケースが多く、それら管理会計のデータを基にして以下のような重要資料が作成されます。
・事業計画書
・取締役会用の資料
・中期経営計画書
また、組織内部の業績測定や業績評価などにも活用されます。このように、将来志向が求められる管理会計の担っている役割はとても大きく、対外的な意味合いの強い財務会計とはまた違った意味の重要性があると言えます。
一覧表にすると以下のようになります。使われるKPI(重要業績評価指標)も名称は同じでも定義、測定方法は同じ業種でも会社によって異なっている点が、管理会計の大きな特徴といえます。
次にマネジメントサイクルについて、お話しします。
下図は、上半分は財務会計、下半分は管理会計を示しています。財務会計が社外に対しての顔であるのに対して、管理会計は社内の顔を言えるのではないでしょうか? つまり、財務会計と管理会計は車の両輪のように機能して、初めて持続的な企業価値が実現できると思います。
財務指標については、本章にて詳述しますが、その前にCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)に関連した管理会計指標の基礎情報として、損益分岐点管理について説明します。これらは管理会計を実践する上で、頻繁に使われております。
① 固定費、変動費
まず、固定費と変動費について説明します。一般的に、固定費と変動費は以下のように分類されています。
・固定費:活動量に関係なく、一定額は支出される経費
・変動費:活動量に比例して、支出額が増減する経費
・準変動費:固定費と変動費のミックス(電力料金、水道料金)
・準固定費:(例)プロバイダーに払う使用料
主な固定費は人件費と経費が挙げられます。人件費とは名前の通り人に関わる費用であり、社員の給料や賞与だけでなく退職金や福利厚生費(健康保険や厚生年金の会社負担金)、通勤交通費などが含まれます。そして経費には広告宣伝費や交際費、社屋の家賃や水道光熱費、事務消耗品代などが含まれます。人件費と経費ではどちらが固定費を占める割合が大きいでしょうか?
答えは人件費です。固定費を下げて利益を増やすとき、経費を抑えるのはもちろんですが、固定費で最大のウエイトを占めている人件費を抑える努力が必要となります。人財は企業にとって貴重な財産であると同時に、人件費は会社経営を圧迫することも事実です。
変動費とは、売上(生産量・販売量)に比例して増減する経費のことを言います。「可変費」と呼ばれることもあり、主な変動費は原材料費や仕入原価、販売手数料などが挙げられます。
人件費は一般的には固定費となりますが、派遣社員や契約社員の給与、残業手当などは変動費とみることもできます。
固定費か変動費かの区分は極めて重要です。特にグローバル企業にとっては、その定義と運用を明確にしないと、様々な管理会計指標を導入する上で支障を来すことになります。
ビジネス環境が厳しくなると、企業は固定費の変動費化をすることで、できるだけ経費を削減するという試みがされます。具体的には、社員給与を削減するため、正社員から派遣社員、業務委託、外注へ振り向けたり、自社で行っていた設備投資を外注業者に委託したり、オフィスの備品であるコピー機を自社の資産をやめて、リースに切り替える等が考えられます。 特に正社員の場合は、給与面だけでなく、蓄積された専門的なノウハウや愛社精神、会社の規律等が失われるリスクがある点も十分に配慮した上でのビジネス判断が求められるのは言うまでもありません。
② 損益分岐点管理
損益分岐点とは、利益も損失も発生しない、利益と損失の均衡した売上高のことを言います。場合によっては、金額でなく数量を使うケースもあるようです。
損益分岐点分析とは、費用(原価)が販売量に応じてどのように変化するかという視点から、売上高が変化したときの費用と利益の関係を分析することを言います。
限界利益とは売上から変動費を引いた額を指します。一般的に、限界利益率の高い商品は収益性が高いと言われており、生産のキャパシティーが限られた中で、どの商品を優先的に生産すると収益性を最大化できるかを試算する際、限界利益率は極めて重要な要素になります。
売上、固定費、変動費、限界利益の関係は下表右をご覧ください。
下表左は、損益分岐点を売上高と費用収益の関係で示したものです。
固定費は売上に左右されず、一定の値を示すのに対し、変動費は、変動費線で示した通り、売上の拡大に応じて増えていきます。総コスト線は、固定費と変動費を足した線を示し、売上高線と交わる点を損益分岐点(Break-even point)と呼びます。
損益分岐点を下回ると損失が発生し、またそれを超えると利益が創出されます。
計算式は以下の通りです。
また安全余裕率とは、損益分岐点売上高に対して現在の売上高がどの程度の余裕になっているかを表すもので、以下の計算式で求められます。
安全余裕率 =(1-損益分岐点売上高/現在の売上高)×100%
損益分岐点を求めるためには、固定費と変動費の区分がしっかりなされていることが大前提となります。事業体全体の損益分岐点は比較的簡単に算出可能ですが、商品ごとの損益分岐点を求めようとすると、固定費と変動費に分解できることが前提となります。
損益分岐点分析の考え方は極めて重要であり、経時変化で損益分岐点がどのように変化し、今後どのように持っていくか、まさに管理会計として重要な項目であります。
次に、損益分岐点、売上高、売上高営業利益率の関係について、お話しします。
営業利益とは、本業から計上される利益であり、将来の投資の源泉となります。
また売上高営業利益率とは、営業利益が売上高からいかに効率的に生み出されたかを示し、企業の存在意義を実証する指標であると言われます。
では、営業利益率を上げるためには、どうすればよいでしょうか?
1) 売り上げを増やす(販売単価を上げる、販売数量を増やす)
2) 変動費単価を下げる
3) 固定費を下げる
4) 限界利益(売上高-変動費)を上げる
等が考えられます。
環境問題については第四章で説明しますが、これからは従来の変動費に加えて、新たに環境費用を変動費として扱うことが求められます。この点からも商品別の損益分岐点管理は重要になると思います。また第七章では、ABC分析(活動基準原価計算)とABM(活動基準原価管理)を説明しますが、より正確に固定費、変動費を区分することが損益分岐点管理の前提条件となります。
ここでは、主な財務指標を整理し、その中でもROEとROICに注力して事例を紹介します。
<主な財務指標>
下表は、企業で一般的に使われている財務指標の一覧について、概要と計算式を纏めたものです。
財務指標は基本的に4つに分類できます。
❶収益性:使用資本や売上高に対して、どれだけ利益を上げているかを示す指標
❷効率性:事業活動において、投入した経営資源が無駄なく活用されているかを示す指標
❸安全性:負債を返済する支払い能力があるかを示す指標 負債を返済できなくなると企業は倒産するため、「倒産しない健全な状況であるか」を示す指標と置き換えるとわかりやすいかもしれません。
❹成長性:どれくらいの割合で増減しているかを示す指標
生産性を付け加えるケースもあるようですが、本書では割愛します。
また測定方法については、下記の通りですが、効率性に関する指標のうち、棚卸資産回転日数、売上債権回転日数、買掛債務回転日数は売上、売上原価を年間平均で割っていますが、CCCの説明では、米デル社の算出方法に倣って、当該四半期末の売上、売上原価を使って算出しています。
また目標を設定する際、SMART手法が理想であるといわれます。SMART手法とは具体的に目標達成のためには、トップ、経営幹部だけでなく、現場レベルまで落とし込んでいることが極めて重要であり、PDCAサイクル及び問題解決のPDCAサイクルを回す上で、不可避な要件であるともいえるでしょう。
SMART手法とは
・Specific(具体的に):明確で具体的な表現や言葉で書き表す
・Measurable(測定可能な):目標の達成度合いが判断できるよう、定量化する
・Achievable(達成可能な):目標が達成可能な現実的内容かどうかを確認する
・Related(経営目標に関連した):設定した目標が職務記述書に基づくものであると同時に自分が属する部署、会社の目標に関連する内容になっていること
・Time-bound(時間制約がある):いつまでに目標を達成するその期限を設定する
次に主な財務指標の原因と結果について触れてみます(下表参照)。総資本経常利益率(ROA)を結果とすると、原因としては右側の指標が考えられます。それら指標を改善するためには、上記SMART手法のRelated(経営目標に関連した)を意識したPDCAサイクルが求められます。
管理会計CCCを概説するにあたり、それに関連する指標について、詳しく紹介します。
本章の冒頭で、管理会計は組織目標を達成するために管理者の意思決定を支援するためのもので、企業によって測定方法、運用は異なると説明しました。
ここでは、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)、ROA(総資本利益率)について説明します。
➀ ROE(自己資本利益率 Return on Equity)
